
所得税は法人税より圧倒的に税率が高いのをご存知ですか?
これは、大企業の株主のための施策によるもので、「株式会社にお金が残る仕組み」になっています。
これを知らず個人で頑張ってもお金は残らず、税負担ばかりが増えてしまいます。
日本の税制は大企業の株主が儲かるようになっていて、その仕組みが一般的には知られていません。
じつは、株式会社の配当という利益の分配の仕組みと日本の大企業の株主を見れば、その構造がわかるのですが、これを知らずに、小手先だけの節税をやってもお金は残りません。
つまり、
- 大企業の株主にお金が残る仕組み
- 所得税率の落とし穴
- 個人事業主の本質的な税金対策
について知らないとお金が残る節税は困難です。
大企業の株主にお金が残る仕組み
株式会社の利益は、株主に還元される仕組みになっています。
株式会社は決算で、その会計期間を締めます。その際、利益が出ていれば税金を納めます。納税後の残った利益は、株主への配当という形で金銭が分配されます。
つまり、納税後の利益が配当の原資となります。

法人税が増税されない理由
納税後の利益を分配する仕組みになっているため、法人税が増税されると、配当の原資が減り、配当金は少なくなります。株主からすれば、配当は多い方がいいので、法人税が上がると困ります。
それが法人税が増税されない理由ですが、そもそも、そんなことが可能なのでしょうか?それは、大企業の株主を見ればわかります。
大企業の株主
大企業の株主は誰か知っていますか?日本の上場企業の筆頭株主はほとんどが外資です。つまり外国の資本家です。
思いつく大企業の株主をググって見てください。
「日本マスタートラスト信託銀行」がでてきます。
日本マスタートラスト信託銀行は日本の法人ですが、その株主は、アメリカのロックフェラー系企業や投資家です。
日本政府が法人税増税をすれば、配当が期待できず、外資は資金を引き揚げたり、日本市場への投資を控えます。そうなると株価は下がり、経済はより一層低迷します。
つまり、暗に外資から圧力をかけられているわけです。
これが法人税を増税できない理由です。
日本の国の税収は下がる一方なのに法人税が期待できなければその矛先は、個人へと向かいます。
所得税率の落とし穴
所得税率が高いといっても、所得税には5%、10%の低税率域があるので、「一見、低所得者層に配慮している」ように見えます。
でも、じつはそんなことはありません。というのは、この5%や10%というのは、個人事業主にとっては、現実的な数字ではないからです。

個人事業主の所得は売上から経費を引いた事業の儲けです。この所得から生活費を捻出しなければいけません。
例えば生活費が月30万円であれば、年間360万円の所得が必要です。360万円の所得は税率で見ると20%のところになります。
つまり、個人事業主の場合、一般水準の生活をしていても税率では法人税と同等です。
さらに、ちょっと頑張れば、この法人税の税率はすぐに超えます。
個人事業で年収1,000万円を超えれば税率は、33%なので、法人税率より高くなります。

さらに、この所得に10%の住民税、約14%の国民健康保険料がかかってきます。

これでは、事業で利益を出してもお金が残らないのは想像に難くないですよね。
個人事業主の本質的な税金対策
大企業やその株主のための政策に傾倒しているのは、どうにも腹が立ちますが、怒っても嘆いてもしょうがないです。
ただ、個人事業主は、これを利用する方法があります。
それが法人成りです。
中小企業の軽減税率
法人税では、中小企業には特別の軽減枠があります。
資本金1億円以下の中小企業であれば、年間所得800万円までは15%の税率になります。

合同会社なら6万円で設立可能
法人を設立すると聞くとお金がかかるイメージがあるかもしれませんが、意外とそうでもないです。最近は合同会社を設立する方法を利用する人も多く、合同会社であれば、かなり初期費用を抑えることが可能です。
区分 | 株式会社 (紙の定款) | 合同会社 (紙の定款) | 株式会社 (電子定款) | 合同会社 (電子定款) |
登録免許税 | 15万円 | 6万円 | 15万円 | 6万円 |
定款用収入印紙 | 4万円 | 4万円 | ー | ー |
定款認証手数料 | 5万円 | ー | 5万円 | ー |
定款の謄本手数料 | 2千円 | ー | 2千円 | ー |
合計 | 24万2千円 | 10万円 | 20万2千円 | 6万円 |
登録免許税は、株式会社は資本金の1000分の7で15万円に満たない場合は15万円、合同会社は資本金の1000分の7で6万円に満たない場合は6万円になります。 登録免許税の税額表 |

電子定款で合同会社を設立すれば、実費は6万円で法人が設立できます。
法人設立のメリット
法人を設立するメリットは、
- 節税になる
- 設立後最大2年、消費税が免除
- 社会的信用力がつく
節税になる
前述したように所得税と法人税では、法人税の方が税率が低いので、法人にするだけで所得に対する税額は軽減されます。
設立後最大2年、消費税が免税
消費税の課税事業者となる要件は、「基準期間の売上高が1,000万円を超えたかどうか」です。基準期間というのは、2年前を指します。
そのため、開業した年とその翌年は免税事業者となって消費税の納税義務はありません。
個人事業から法人成りした場合もこれは適用されるので、設立後最大2年は消費税が免税です。
社会的信用力がつく
個人事業でビジネスをやるのと法人でやるのは信用力には大きく差が出ます。新規の取引先との契約においてはもちろん、融資を受ける場合にも同様です。
法人設立のデメリット
法人を設立するデメリットは、
- 初期費用がかかる
- 赤字でも法人住民税がかかる
- 税理士費用がかかる
初期費用がかかる
法人を設立するには登記が必要で、そのための費用がかかります。
赤字でも法人住民税がかかる
法人にすると、赤字の場合、国税である法人税はかかりません。一方で法人住民税(法人都道府県民税と法人市町村民税)には均等割があります。均等割とは法人が存在することで発生する税金です。均等割は資本金と従業員数等で区分されていて、最低でも法人都道府県民税で年20,000円、法人市町村民税で50,000円程度負担することになります。
税理士費用がかかる
所得税の確定申告は、自分で作成できますが、法人税の申告書は専門的知識が必要で、正直税理士以外の人が作成するのは難しいです。
そのため、法人を設立すれば、税務申告は税理士に依頼するのが一般的です。
今すぐにすべきことは?
個人事業では「法人を設立するのが節税の上では最適解」ですが、やみくもに焦って実行するのはおすすめしません。
というのは、「法人設立のメリット」の章でも解説したように、消費税は開業最大で2年は免税です。これは法人でも個人でも要件を満たせば適用されます。
つまり、「個人事業で起業→法人設立」の流れで最大4年は消費税が免除になるので、これを使わない理由はないです。
また、法人を「株式会社」にするか?「合同会社」にするか?設立のタイミングは?といったことを決めずに実行するのはリスクが大きいです。
そこで
- 開業1年目の人
- 開業2年目以降の人
といった段階に応じて今考えておくべきことのロードマップを作成しました。
開業1年目の人
個人事業で開業したばかりなら、法人成りのタイミングは消費税の免税期間の経過後がおすすめです。
とりあえず、節税策を考えるなら、青色申告は必須です。また、初心者にありがちな、節税目的で何かを始める(=支出をする)のは危険です。
それよりも、すでに支出したものを「いかに経費にできるか?」を考えましょう。
開業2年目以降の人
法人設立に向けて法人化の知識を深くつけましょう。具体的に法人のメリット・デメリット、株式会社にするか?合同会社にするか?など検討事項をこちらにまとめました。
https://www.sanzenri.net/incorporation/
2023年より消費税はインボイス制度が導入されます。そのため、これまでのように、消費税の免税事業者が必ず得をするというわけでもなくなりました。法人成りの際には無視できないインボイス制度についてはこちらの記事にまとめています。